不老長寿、若返り方法の発見による近未来社会の姿はどうなるのか

1 不老長寿物質の発見

かつて明治時代のころは人生50年の時代でしたが、今や日本の平均寿命は2016年の厚生労働省の統計によると女性87.14歳、男性80.98歳で、いずれも過去最高の年齢で、男女とも香港についで世界第2位の長寿国となっています。

人間は昔から死を恐れて、ずっと生きていたいとか、いつまでも若くいたい(特に女性)ことを願って不老不死や不老長寿の方法を研究したり、いつまでも若さを保つ研究をしてきました。
これは、栄養の向上や治療技術の発展等で寿命は年々寿命が延びたり、美容効果の技術などで見た目が年齢の割に若く見えたりする時代となりましたが、根本的かつ画期的に寿命を延ばす方法や若返る方法は見つかっていませんでした。

しかし、昨年、不老長寿の医学的方法、若返る医学的方法が発見され、注目あsれました。

人間の染色体の先端部に人間の寿命を決定づけているテロメアと呼ばれる構造体があり、細胞分裂するごとにテルメアが少しずつ失って短くなっていき、やがてヘイフリック限界と呼ばれる細胞分裂の停止が起きて死に至ります。これが老化の原因になっています。しかし、テルメアを長くする酵素「テルメアーゼ」が発見されました(2009年ノーベル賞)。このテルメアーゼを投与することによって、マウスの寿命が延び、またクリームを塗ることにより肌が若返ることが実証され、現在、既に商品化されています(大変、高額ですが。)。

また、体のエネルギー代謝にとって必須の物質であるNAD(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)の合成中間体であり、長寿遺伝子とも呼ばれているサーチュイン遺伝子を活性化させる「NMN」(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)を人間でいえば60才に相当するマウスに1年間投与したところ、人間でいえば20才の肉体になりました。
これは以前テレビで放映されていましたが、見た目が毛がぼろぼろで動作も鈍く見るからに年老いたマウスが、NMN投与後は毛艶もよく動きが機敏な若々しいマウスに変身していたのを見て衝撃を受けました。

2 不老長寿社会の近未来予測

現在、人間の寿命の限界は125才(現在、公式記録で過去最高齢はフランス女性の122才)程度と言われていますが、テルメアーゼやNMNの発見によって今後不老長寿のバイオテクノロジーが進歩して人間は高齢になっても若さを保ち、寿命が相当延びることが予想されます。

そのような時代が間もなくやってくる可能性は大いにあります。
そのとき、社会はどのようになっているのでしょう。また、その状態が今後延々と続いた場合、どのような問題が起きるのでしょう。

まず、若返りにより健康寿命(日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと。)が延びます。現在、健康寿命は、男性約71才、女性約74才ですが、これが90才、100才と延びていくことになります。

そうなると、将来さらに進む少子化の中で今の年金制度では財政が確実に破綻しますので、老齢年金の支給年齢はさらに高齢化していくでしょう。
それに連動して定年65才(公務員は60才)制度では、高齢者は年金をもらえない期間が長くなり、生活できなくなるため、職業安定法の改正で定年の年齢が上がります(たとえば定年80才)。
つまり、高齢になっても健康なうちは年金を支給しないので働きなさいということです。

そうなると、会社はどうなるでしょう。通常、会社の規模が拡大しない限り、定年などの退職者を補充するために新規採用をしますが、定年が80才まで延びてしまうと、その分新規採用する人数がペースダウンします。また、定年の年齢が延長されるため、昇給や昇格等もゆるやかにしていく必要があるでしょう。

したがって、本来であれば、若者は就職難になることが予想されますが、少子化も進んでいきますので、人手不足の問題は緩和されていくでしょう。
ただし、同時にAIロボットによる人間代替化も進んでいくことが予想されますので、いずれ就職難の問題が浮上してくる可能性があります。

近未来社会の予測

今日は人手不足の問題とAI(人工知能)の話を取り上げ、近い将来の社会像を考えてみます。
今の時代、事務系の仕事以外はどの仕事も求人倍率が1倍を超えていて、完全な売り手市場になっています。
今の世の中では、賃金がなかなか上がらない上に社会保険料がどんどん上がって自分が生きていくことが精いっぱいの若者がどんどん増えていくため、結婚をする経済的余裕や子供を産み、育てていく経済的余裕がますますなくなっていくことから、少子化はますます加速的に進んでいくと思われます。

さらには、AIが今後急速に進化していくことが予想され、事務系の仕事がAIに奪われていくことが予想されているため、求人倍率はますます高くなっていくことが予想されます。

しかし、皮肉にもこの人手不足の問題はいろいろな仕事を奪っていくであろうAIが解決すると思われます。
人手不足の業界がある一方で、AIの普及で職がなくなっていく業界があり、10年後~20年後には現在の職業の半分はなくなると言われており、そのころの世の中は今では想像がつかない世の中になっているかもしれません。

人間型ロボット技術も急速に進化しており、AIの進化と相まってアンドロイドのようなロボットが誕生して、人間に代わって人手不足を補っていくでしょう。

そのような社会がさらに進化していくと、いつか人手不足が転じて失業者が増え続けていくでしょう。
ロボットでも出来ないような新たな職業を見出していかない限り、この世の中は景気がよくても失業者であふれることになるかもしれません。
現に米国では、証券会社には既にデイトレーダーはほとんどおらず、株の売買は各証券会社のAI同士の戦いになっており、また、数年前からAIまで行かずにクラウド会計ソフトの段階で税理士や会計士の仕事が相当失われています。
我が国においても税理士、公認会計士、弁理士などの士業の存続が危ぶまれています。社労士も手続き代行業務が失われていくことが予想されるため、コンサルタント業務に生き残りをかけるしかないのかもしれません。

また、少子化で労働人口が減って、人材派遣業が衰退していく代わりに、AIロボットの派遣業が中心となり、より優れたAIロボットを開発するためにメーカー間の熾烈な競争が続くことになるでしょう。このとき国の統計では「労働人口」の統計に加えて、「人間型ロボット数」の統計を取るようになるでしょう。

運送業界での人手不足については、近い将来、高速道路だけではなく、一般道路においてもAIを備えた無人自動車が普及し、トラック運転手やタクシー運転手が不要となるかもしれません。

建設現場などで危険有害な作業に従事する業務については、ロボットが作業するようになり、重篤な労働災害は減少するでしょう。
今後さらに人手不足が深刻な状況になることが予想される介護業務などについてはロボットが代替することとなり、長時間労働や腰痛災害等の問題もなくなるでしょう。
金融機関については、既に中間管理職が不要になりつつあり、相当な数の職員がいなくなるでしょう。
多店舗型小売業については、少数の正社員と多数のパート社員で成り立っていますが、これからはレジも自動セルフ会計により無人化され、人間またはロボットの店長と少数の作業ロボットだけになるでしょう。
また、ロボットではまだできないファジーな作業や繊細な判断を要する作業については人間が行い、店長のロボットがそのような人間を指揮管理する時代が来るかも知れません。

この来る第4次産業革命は、かつての産業革命のように機械化、電子化によって特定の業界の失業者が出ても新たな職業が生まれた時代と違って、人間型AIロボット化によって新たな職業が生まれることはあまり期待できないような気がします。たとえ新たな職業が生まれたとしても失われた職業のほうが相当多いのではないかと思います。
このような社会に対応していくためには、今とは全く異なる社会のしくみを構築していく必要があるでしょう。

AIロボットに仕事を奪われた人間は、どのように収入を得て生きていけばいいのでしょうか。
働き口を失った人間は、生活困窮者となってますます結婚する者が減り、結婚できたとしても子どもを育てるほどの経済力が乏しいため、ますます少子化が進むという負のスパイラルが加速していくおそれがあります。

我が国では人口を維するのに必要な合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数)は、2.07とされていますが、2017年では1.44となっています。このまま日本の人口が減り続ければ、将来日本には純粋な日本人がいなくなるかもしれません。

昨年、フェイスブックのAIの研究開発の中で、AI同士で会話させていたところ、人間では理解できない言語を作り出し、勝手に会話を始めたとの報道がありました。この手のAIの学習能力の進化を放置してしまうと、将来人間型AIロボットが普及したときに人間を支配するための策略をAIロボット同士で勝手に話し合う可能性もありえます。
SF映画が実現してしまう可能性がもう既に始まっていることを認識する必要があります。
しかし、人間の科学技術に対する知的欲望を抑えることは不可能であると言われています。
知的欲望は人間の知性というより本能だと思います。
幼い子供がこの世に生まれて初めて見るものなどに対して「なせ?どうして?」と親に聞く心と本質的には同じだと思います。
その本能が、かつて、核爆弾の発明に繋がらないことを祈っています。

AIが人間の知能を超える「シンギュラリティ」は2045年と言われていますが、もっと早くその日が来る気がします。その日が到来する前にAIが暴走しないよう何らかの対策を立てる必要があると思います。