このままでは日本中の企業がブラック化する

人手不足がブラック企業を拡大させています。ロボットによる自動化は人手不足に追いついていません。特に業界的に自動化が難しく人手を頼りにしている企業はパートを募集してもよっぽど条件を良くしない限り、なかなか応募がありません。そのため、慢性的な人手不足が続き、連鎖的にそのしわよせが現場の社員に来て、パートの仕事を肩代わりすることによって、長時間残業となり、過重労働による健康障害が増加していきます。このままでは、過労死、過労自殺がますます増えるでしょう。

会社は、監督署の眼がうるさいので、36協定の範囲を超えて残業させないために、残業規制の指令を出す企業が少なくありません。
たとえば月30時間以上は残業しないよう自主規制を促したりします。
したがって、各社員またはリーダー格のパート社員は、月の残業時間が会社指示の時間を超えないよう残業時間帯の途中でタイムカードを打刻します。あとはお決まりのサービス残業(正式には「賃金不払残業」)となります。

この賃金不払い残業をさせている企業のほとんどは、会社側の責任者も確実に容認しています。その結果、タイムカード上は36協定の範囲内となっているため、労基法第32条違反(残業時間の協定超え)や同第37条違反(残業手当不払い)は認められませんが、賃金不払残業の時間を含めるとほとんどの場合が36協定の限度時間を大幅に超えて、過労死レベルの月80時間から100時間になっているケースが多く存在します。。

これが典型的なブラック企業の実態です。
私の知り合いにもこのようなブラック企業に勤務している人が多く(特にパートを多く使って人手を頼りにしているような企業)、希望に満ちて正社員として入社した会社が典型的なブラック企業(スーパー)だったため、入社1年後に体を壊す前に退職を決意した人がいました。

また、ある24時間稼働の食品工場では、パートを多くかかえている現場の若い社員が毎日午後8時から翌日の正午まで働かされ、途中の午前6時ころにタイムカードを打たされ、毎日5~6時間の賃金不払残業を強いられています。これは推定月140時間の残業となり、完全に労災の過労死認定基準を大幅に超えた残業時間になっています。逆にまだ過重労働で倒れていないほうが不思議なくらいです。

人は月45時間の残業時間を超えると超えた時間に比例して脳疾患、心臓疾患、精神疾患等が発症する確率が高まることが医学的に立証されています。そのため、厚生労働省では36協定は原則として月45時間を上限としており、この残業時間が80時間を超えると過重労働が原因で倒れた場合の労災認定基準に達し(ただし、発症前の2~6か月間の平均)、直前で月100時間を超えるとほぼ間違いなく労災認定基準となります。

さきほどの月140時間の残業時間については、この時間まで残業させ、長時間にわたる賃金不払残業を発生させて、過重労働で倒れたときは、仮に死ななかったり、あるいは後遺症が残るような障害にならなかったとしても所轄の労働基準監督署長は労働基準法違反容疑で司法事件として着手することを決定し、書類送検した日に悪質な企業としてプレス発表をすることになるでしょう。

今、紹介した企業は世の中では比較的知られた企業ですが、実態がブラック企業であることは世間の人にはほとんど知られていません。過重労働で倒れて事件となってマスコミに報道されない限り世間に知られることはないでしょう。事件として報道されたどこかの居酒屋や大手の広告会社のように。
しかし、一旦、ブラック企業として報道されると、そこには希望して入社する人は激減し、もはや優秀な人材を確保することはできないでしょう。つまり、労働者の労働力を搾取して企業が生き延びたとしても、誰かが過重労働で倒れれば、事件として公表され、世の中にブラック企業のお墨付きの烙印を押され、さらに人手が確保できなくなり倒産に追い込まれるでしょう。

この話は何もレアケースではなく、これからますます急速に進む少子高齢化によって、多くの業界が人手不足となり、残された従業員の過重労働はますます増加していくことは間違いありません。

その過重労働に耐えられず従業員が退職していけば、さらに残された従業員の負荷が増大し、過重労働による人手不足はまさに負のスパイララル現象を招くことになります。

この負のスパイラルを解消していくためには、RPA、AI、IT化等のデジタル化による業務の効率化、労働生産性の向上が急務であり、産業界や政府もこれに全力を投じて取り組まなくてはなりません。

RPAやAIが人間の職を奪うなどと悠長なことは言ってられない状況なのです。このままでは日本中の企業がブラック企業化するのは眼に見えている。

これは、もはや労働基準監督署の司法、是正勧告、指導、行政処分では解決できない問題です。

特に人手が足りない業界を優先して、RPAやAIによる業務の自動化を早急に実現させていかないと日本経済も立ち行かなくなるでしょう。

世の中をマクロで見ると、人手不足を解消しない限り、働き方改革は実現しません。RPAやAIによるロボット化は、将来企業で働く労働者の仕事を奪うかもしれないという心配よりも、現在労働者が働いている企業が倒産するかもしれないという心配のほうが優先される状況なのです。

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