1 少子化の原因
昨今、日本は少子化が進んでいると言われ続けていますが、一般的にいわゆる先進国はほとんどが少子化に向っています。これは、何故でしょうか。
日本を例にとると、労働者層の2極化が進み、かつての高度経済成長期のように日本人の大部分が中流家庭意識を持てなくなり、若者は経済的になかなか結婚に踏み切れず、また結婚したとしてもせいぜい子供は1人という家庭が増えているため、そうした社会情勢が人口減の要因となっていると思われます。他の先進国も似たような要因が多いのではないでしょうか。
人間の寿命が特に日本では急速に延びており、1960年では、男性65歳、女性70歳でしたが、今や男性81歳、女性87歳の時代となっています。特に戦前までは男女ともに平均寿命は40歳代であり、人生50年もない時代でした。
これは、食生活の向上や医療技術の発展などが寄与しているものと思いますが、この長寿化はそれとは関係ないという説もあります。これを生物学的現象の観点から見ると、寿命が今より短い時代には多くの子供を産み、寿命が長くなるにつれて、生む子供の数が減っていることから、自然界は、長寿で死ぬ人が減っていく環境の中で、生まれる子供の数が減らないと、人口がどんどん増え、人口爆発になる可能性があるため、子供の数を調整しているのかもしれません。
2 超高齢化社会で年金財源はどうなる?
これは自然の摂理と言ってしまえばそれまでですが、社会制度はそれでは済まされません。かつて、日本の企業の定年が55歳のころは、年金も60歳から支給されていましたが、定年が60歳に義務化(1998年施行)され、老齢厚生年金の支給開始も65歳に引き上げられました。さらに2012年には本人が希望すれば全員を65歳まで引き続き雇用しなければならないことになりました。
この先、平均寿命はますます延び、その年金を支える若者がますます減っていくと、年金に充てる財源がますます厳しくなることは明らかであり、定年と年金支給開始年齢の従来の相関性から判断して、近い将来、年金支給開始年齢が70歳になることは間違いないでしょう。年金に充てる財源がなくなっていくと不足分を税金で充てることになるでしょうから、将来は事実上年金はほとんど税金から支給されるような時代になるでしょう。
3 長寿化社会に対応した抜本的制度改革が必要
一方、寿命と関係する遺伝子が次々と発見され、マウスや菌の段階で寿命が相当延びることが実験で証明されたため、将来、人間も遺伝子操作などによって、老化が軽減され、相当長生きできる可能性が出てきました。
したがって、長寿化が少子化を引き起こす自然の摂理だとすると、ますます少子化が進むことになり、年金を税金から支給する割合はますます大きくなるため、税金はますます高くなるでしょう。
さらには、AIの進化と普及によって、職を失った多くの国民は、高い税金や高い年金保険料などのため、生活が困窮し、内需が落ち込み、経済は低迷するでしょう。
この時は、既に年金の財源はほぼ破綻している可能性があるため、年金制度は消滅し、高齢者を含めて以前の記事で書いたベーシックインカムの時代にならざるを得ないでしょう。
4 ベーシックインカムがもたらす社会
世界の半数以上の資産をわずか1%の富裕層が所有している現在において、AIの進化と普及によって、ますますわずかな富裕層に集まる金は増加し続けるでしょう。
やがて、富裕層だけにお金が集中し、99%の人間にお金が回らなくなったら世界はどうなるのでしょう。
各国の富裕層は、国内の富裕層では間に合わず、外国の富裕層に販売していくことになりますが、そもそも富裕層は大多数の人間が購入する商品を富裕層だけで分け合うことは、到底、採算が取れません。たとえば、世界レベルの商品の販売量を購入することに匹敵するために、1人の大金持ちが何万台も車を購入したり、牛肉を毎日何万トンも買っ足りしなければなりません。いくら大金持ちになっても市場で出回っている商品を購入するニーズは通常の人間と大差ないのです。
当然そうなると富裕層の経営はニーズが激減し、経営が成り立たなくなります。
人間の生命維持も自然界の摂理なども異常な状況は維持できないしくみになっています。したがって、一部の富裕層だけが生き延びて大多数の人間が貧困で死に絶えていく社会のしくみは維持できません。やがて、富裕層も貧困化して消滅します。
しかし、わずかな富裕層だけにお金が集中する傾向は、AIの進化と普及によって、ますます増大し、もはや通常の政策では止めることはできません。
それを解決するためには、富の分配をするしかないでしょう。
その方法としては、富裕層の税率を高くすることによって得た税金や適正な増刷などで集めたお金をベーシックインカムによって、全ての国民に生活していく上での最低限のお金を供給するシステムを構築せざるを得ないでしょう。
その結果、人間は自分の好きな仕事、得意な仕事や才能を生かした仕事にじっくりと就活したり、取り組む余地が生まれ、ミスマッチの問題も緩和されることでしょう。
また、企業側も労働者はベーシックインカムの収入があるため、比較的低賃金で雇用することが可能となるでしょう。そのような社会では、単純な仕事や定型的な仕事はAIロボットに任せて、AIでもできないより創造的な仕事を人間が行う社会になるでしょう。