睡眠不足は脳細胞を損傷させる

眠らない状態を数日間続けると死ぬ可能性がある

世の中の人々は、できるかぎり長生きしたいと考えている方が多いと思いますが、一方で私たちは睡眠によって人生の3分の1(寿命90歳とすれば30年)の時間が犠牲になっています。短い人生でこの「睡眠」をなくすことが出来れば、人生を3分の1多く楽しむことができるのでしょうが、何故人間は睡眠をとらなくてはならないのでしょうか。

人間を含む多くの生物は脳や体の活動を一時的に休止する「睡眠」を必要としますが、睡眠のメカニズムは現在も完全には明らかになっていません。しかし、いろいろな実験から動物を長期にわたって睡眠不足に陥らせると健康を害し、最悪の場合死に至ることがわかりました。

かつて、ロシアの女性医師が、子犬を何日も目覚めさせたままにして、数日間睡眠を取らせなかったらどうなるかという睡眠に関する動物実験を行ったところ、睡眠不足にし続けて数日後に子犬は亡くなったそうです。死後に解剖した結果、子犬の脳に深刻な病変が発生していたことがわかりました。

また、1898年にイタリアの生理学者が、常に散歩して連れ回すことで犬を睡眠不足にする実験を行ったところ、十分な餌を与えられていたにも関わらず、犬は9~17日後に亡くなり、解剖の結果、脳細胞や神経細胞に変性が認められたことが報告されています。

睡眠が脳細胞のDNAのダメージを修復する

また、最近新たな研究発表があり、魚の脳細胞では日中にダメージを受けたDNAが蓄積され、その修復作業は睡眠中にしか行われないことが示されました。その研究者は、生き物が眠りを必要とする理由の1つは、この「ダメージの修復」にあるのではないかとみています。

したがって、睡眠を与えないことを続けると脳に異常な状況が発生し、場合によっては死に至る原因はここにあるのではないかと思います。

つまり、起きている間に発生した脳細胞のDNAのダメージを修復させるために睡眠に入るわけですが、強制的に睡眠を与えない状況が続くと、脳細胞や神経細胞のDNAのダメージが修復されないまま、どんどん蓄積されて、最後には脳が機能不全になって死に至るのではないでしょうか。

睡眠不足が過労死の主たる原因となっている?

また、この発見によって、たとえば、過労死の原因も長時間労働と過重なストレスによって生じた脳細胞や神経細胞のDNAのダメージが睡眠不足によって十分に修復されず、損傷したDNAが時間とともに蓄積していき、やがて脳障害が発生して死に至るのではないでしょうか。

2015年12月に過労自殺した大手広告会社の新入女子社員は、投身自殺した当時は長時間労働で1日の睡眠時間が2時間の日が続いたということで、直接の死亡原因は自殺ですが、自殺しなかったとしても極端な睡眠不足が続くことによって脳疾患が発症し過労死するのは時間の問題だったと思います。

この過労死事件に限らず、多くの過労死事件は若い労働者なのに長時間労働が長期間続くことによって、脳出血や脳梗塞を発症して死亡するケースが多いのが現状です。これも過重なストレスと連日の睡眠不足によって脳細胞のDNAのダメージの修復が追いつかず、死に至った可能性が高いと思われます。

政府の対応

  政府は、2018年7月に公布した「働き方改革関連法」の中で、時間外労働時間の上限時間を設けたことのほか、「勤務間インターバル」制度を設けることを企業の努力義務とし、2019年4月1日から施行されることになりました。この制度は、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

ヨーロッパ諸国では勤務間インターバルが既に法規制で、11時間や12時間と定めた国が多いですが、日本は特に時間は定めておらず、しかも努力義務なので罰則はありません。今後、少子化等によってますます深刻な人手不足の時代が続いていくことが予想される中で、現役の労働者の過重労働がますます懸念されることから、睡眠不足による過労死を増やさないためにもここは義務化すべきだったと思います。

まとめ

睡眠不足が続くと、「睡眠負債」として損傷した脳細胞のDNAが修復されないまま蓄積されていき、さまざまな健康障害を引き起こすおそれがあることから、日頃から十分な睡眠がとれるよう心がけましょう。

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