潜在能力を引き出す方法

ゴミと言われていた98%のDNAは役立っていた

教師が学生に向かって、あるいは長老が若者に向かって、「君たちには無限の可能性がある。」と言うことがあります。
これは、つまり、どういうことを言いたいのかというと、「私のような年齢になるとこれからやりたいことがあっても年齢的に実現させることは難しいが君たちはまだ若いのだから将来やりたいことを実現させることができる選択肢は無限にあって、その中から自分に興味があって、自分に合ったものを見つけなさい。」ということだと思います。

しかし、その言葉を聞かされた若者は、生まれた時代、生まれた環境、教育された環境などの違いの中で既に無限の可能性はなく、限られた選択肢しか残されていないと実感することが多いでしょう。

  実際に職業の面から考えると職種は無限にあるわけではなく、就活する際の就職先の選択肢は限られたものになります。

  特に「自分に合ったもの」や「自分に才能があるもの」を見つけることは簡単なことではありません。いくら自分に興味があっても自分に才能がない場合も多くあります。また、「これ、自分でやってみたいけど、自分には無理だな。」と思ったり、「これ、あまり興味ないのだけど仕事だと思ってやるしかない。」と思ったりすることがあるかと思います。自分にはこれといって特に才能は持ってないと思っている人も多いでしょう。

  しかし、まだあきらめてはいけません。人間にはいわゆる「潜在能力」が存在する可能性が高いことが脳科学の研究により明らかとなりました。

人間の遺伝子は人間が持っている全てのDNAのわずか2%しか使われていないため、残りの98%のDNAは何の役にも立たないゴミ同然ということが定説となっていました。

  しかし、2%の遺伝子はあくまで基本的な人間の設計・複製の役割を担っているものであり、例えば、人間の顔立ちや外見的な特徴などは、明らかにされている遺伝子の影響ではなく、残りの98%のゴミと言われているDNAの中から決定されていることや、タバコの有害性を抑制する酵素を作り出すDNAやコーヒーに含まれるカフェインによる有害性(高血圧など)を抑制する酵素を作り出すDNAは残りの98%のDNAから決定されることが発見されました。
コーヒーは抗酸化作用など効用が多いのですが、 カフェインによる有害性(高血圧など)を抑制する酵素を持たない又は弱いDNAを持っている人はあまり多く飲まないほうがいいでしょう。

  つまり、これら残り98%のDNAは、その人の個性、才能、そして普段は活動しないが、外部から刺激に対する防御作用として備わった能力などを持っているのです。

  たとえば、少しタバコを吸い続けるだけでも肺がんになってしまう人がいれば、ヘビースモーカーで90歳を超えてもがんが発症せず生きている人もいます。これは、タバコの有害性を抑制する酵素の量によって、残り98%のDNAの能力に個人差があるためです。

がんが発症するかどうかということも残りの98%のDNAによって、それぞれスイッチがあり、普段はオフになっていますが、あるとき何らかの刺激などによってスイッチがオンとなり、がんが発症することもわかりました。
この残りの98%のDNAの中にはいたるところにオン・オフのスイッチがあり、普段は全てオフになっていますが、あるとき急にオンになることがあります。
花粉症もある日急に花粉症になることが多いので何かのきっかけでスイッチがオンに入ったものと思われます。

  また、子供は父親と母親からそれぞれ半分ずつ遺伝子をもらって生まれると言われてきましたが、実は70個の遺伝子は残りの98%のDNAによる突然変異によって作られます。

  したがって、子供の性格や趣味や特技などが親に全く似てないことがよくありますが、それは育った環境の影響もありますが、この新たに作られた突然変異による70個のDNAによるものも大きいかと思います。

潜在能力を引き出すには

  残りの98%のDNAにはたくさんの能力が眠っている状態になっていて、そこに何らかのきっかけでスイッチが入ってオンの状態になると、いろいろな酵素を作ったり、その量を調整したりして、能力を発揮します。

  つまり、人間の「潜在能力」はその残りの98%のゴミと言われていたDNAの中に眠っているわけです。この潜在能力はどのようなものがあるのか自分では全く分かりません。それを引き出すためには、そのDNAのスイッチをオンにする必要があります。

ではどのようにしてそのスイッチをオンにすることが出来るのか。

それは、そのスイッチがオンになりやすいように外から刺激を与えればいいのです。

たとえば、自分はJAZZを聞くのが好きになり、そのうち聞くだけでは物足りなくなり、自分でジャズギターをマスターしてプロを目指したいと思ったときに果たして自分にその能力があるのかどうかはわかりません。そこで自分で教本を買って練習したり、スクールに通ったりして覚えようとします。それでも中にはほとんど上達しない人やすぐに挫折してしまう人もいるでしょう。そのような人はおそらくもともとジャズキターが弾ける能力を持つDNAを持っていなかったか、スイッチがオンになっても能力が低かったりとか、能力は高いのだけどなかなかスイッチがオンにならなかったとかいくつかの原因はあると思いますが、高い能力を持ったDNAであれば、演奏を続けたときに一旦スイッチが入るとそのままプロ級のテクニックが身につくまでマスターできたりします。

  ここで、重要なことは潜在能力を引き出すためには、まず行動を起こすことです。そして、その行動に関するいろいろな情報を吸収して、その潜在能力を持ったDNAに刺激を与えることです。せっかく、潜在能力として眠っている宝が入っている箱を開けなければ、文字通り「宝の持ち腐れ」となります。

人には好き嫌いがあると同時に、向き不向きというものがあります。

「好きだけど向いていない」場合とか、「嫌いだけど向いている」場合など4つの組み合わせがありますが、最もラッキーなパターンは「好きで向いている」パターンです。

興味があることを自分で始めて見たらどんどん上達し優れた技術が身につくようになることや嫌いなこととか興味がなかったことでも仕事などの理由で始めたことが自分の眠っていたDNAにスイッチが入って才能が開花することがあります。 

教育は潜在能力を引き出す役割を重視すべき

よく学校で好きでもない数学を覚えたり、2020年からは小学生にプログラミング言語の教育を義務化したりするのは、好き嫌いに関わらず、将来の国の産業の技術開発などで必要不可欠な知識であり、その分野が得意であるかどうかという潜在能力を引き出すためにも教育はDNAのスイッチをオンにするためのツールとして重要な役割を担っています。

スポーツの世界などでもよく見られますが、プロのスポーツ選手が学生のころは全く別のスポーツをやっていたということをよく聞きます。それは学生のころまでやっていたスポーツ以外のスポーツでも潜在能力を持つDNAが眠っていて、そのスポーツを始めることによりそのDNAのスイッチがオンとなって潜在能力が開花したのです。

これは企業の社員教育や社員研修にも通じることです。

たとえば、世の中は今急速な少子化の影響によって労働人口が急速に減少しているため、業務効率化による労働生産性の向上は、企業の存続のための喫緊の課題となっていますが、そのための方法としてRPAの導入やVBA(Excelマクロ)の導入による定型業務の自動化は非常に有効な手段であるとされており、多くの企業が導入に力を入れているところです。

そのため手近な手段としては安価な自動化が可能なVBAを使った業務の自動化を進める企業が多いと思いますが、VBAは所詮Excelマクロのプログラミングに使われる言語なので誰でもできると思っている方もいるかもしれませんが、これはれっきとしたプログラミング言語です。したがって、プログラミングのセンスがない人にとっては習得は難しいでしょう。覚えれば誰でもできる程度のレベルの言語だと思いますが、いくら文法や関数を覚えても業務のしくみや構造を正確に分析・把握して、論理的にその流れを組み立てることができないと正しいプログラムは書けません。

そのあたりのセンスは、好き嫌いというよりも向き不向きがあると思うので、まずできるだけ多くの社員にVBAを習得してもらい、その中から向いている社員を選択して各部署における定型業務の自動化にチャレンジさせてみては如何でしょうか。

まとめ

生物は、常に突然変異によって過酷な環境や新しい環境に適応した遺伝子が優位となって、進化を続けてきました。

生物は使う必要がないため使わなくなった機能はどんどん退化していき、ムダな機能は残っていない状態になっているということが生物学のひとつの法則となっています。

この法則にしたがえば、長い間ゴミと言われてきた98%のDNAも決してムダに不要物として体内に残っていたわけではなく、何か必要があって残り続けていたはずであるという発想で近年研究が進められたところ、生物の進化などに重要な役割をもっていることがわかったわけです。

この98%のDNAについては、まだまだ解明できていない部分がたくさんあり、これからさらに新しい事実が発見されてくると思われます。

自分には何も才能がないのだと悲観している人は、まだまだたくさんの宝(潜在能力)が眠っているはずので、今の年齢に関係なくあらためて自分の宝を発掘する旅に出てみては如何でしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です