将来本当に男性の消滅によって人類は絶滅するのか

生まれてくる赤ちゃんの性別は、性別を決定づける染色体として、母親のX染色体と父親のX染色体が融合してXX染色体となった場合は女の子となり、母親のX染色体と父親のY染色体が繋がってXY染色体となった場合は男の子となります。
X染色体に含まれる遺伝子の数は1,098個と言われており、かつて、哺乳類が誕生したころは、Y染色体もX染色体と同じくらい遺伝子の数がありましたが、徐々にその数を減らしていき、現在は78個と言われています。

  人間の男性を決定づけるY染色体が長い年月を経て徐々に短くなっているため、将来は男性が消滅する可能性があると言われています。したがって、Y染色体の消滅とともに男性も消滅し、子孫を繁栄させることができないため人類は絶滅する可能性があります。

  生物は絶滅しないよう繁殖によって長い間遺伝子が子孫に受け継がれてきました。初期に発生したアメーバのような単細胞生物は細胞分裂による自己繁殖によって子孫(クローン)を残していきました。
生物の中にはやがてメスとオスに分かれ、交接することにより子孫を残す有性生物が出現しました。哺乳類は全て有性生物であると言われています。

しかし、有性生物の中には、環境によってはオスがいるのにメスだけで子孫を残す生物もいます。蜂、蟻、ゴキブリ、ヘビ、サメなどです。

  ゴキブリは周囲にオスがいなくてメスだけになると自分で卵を産みます。このようにオスとの交接なく自分で子孫を残すことを単為生殖(たんいせいしょく)と呼びます。
哺乳類の単為生殖はありえないと言われてきました。しかし、2004年の東京農工大学の教授がマウスを使って、メス同士の卵子を交配させて子孫を残すことに成功しました。当時、成功率は1%ほどでしたが、その後、さらなる遺伝子の発見により2007年には30%の確率で成功するようになり、現在も各国でその技術が盛んに研究されているそうです。

  将来、男性が絶滅しても、この技術を進化させて、人間の子孫を残すことができるのかもしれません。

  また、人間の赤ちゃんは受精してから胎児に成長するまでの間、途中で魚の形をしたり、しっぽが生えていたりと、人間の進化の歴史を再現していると言われています。そして、最初は全ての胎児が女性です。したがって、全員が胎盤や子宮を作りながら成長していきます。ところが、4週目ころになって、突然男性を作る因子であるSRY遺伝子が現れて女性器を男性器に作り変えていき、女性が男性へと変化します。

つまり、胎児の変化の歴史が人間の進化の歴史を物語っているとすれば、人間のルーツには単為生殖の時期があったのかもしれません。

一方で、鹿児島県から台湾にかけて連なる南西諸島に生息しているトゲネズミにはY染色体がなく、オスもメスもX染色体1本しか持たないXO型を持っています。かつては、オスはY染色体を持っていましたが徐々に短くなって遂にY染色体が消えた可能性があります。

ところが、Y染色体がなくてもオスが生まれているのです。この原因はまだ研究中ですが、他のX染色体の中にオスを出現させる遺伝子が含まれている可能性があるそうです。

したがって、たとえ、男性のY染色体が将来消えても遺伝子の進化(又は突然変異)によって別のX染色体の中から男性を出現させる遺伝子が現れるかもしれません。
あるいは、1,098個あった遺伝子から78個まで減ったところで、これ以上はあまり減らない状況が長い間続くのかもしれません。

いずれにしても、今の状況で、男性が消滅し、人類が絶滅するかどうかについて予測は難しいでしょう。

生物学的に人間の運命が絶滅の道を選んでいるとしても、そのしくみを知った人間が技術によって克服するのかもしれません。