今日は人手不足の問題とAI(人工知能)の話を取り上げ、近い将来の社会像を考えてみます。
今の時代、事務系の仕事以外はどの仕事も求人倍率が1倍を超えていて、完全な売り手市場になっています。
今の世の中では、賃金がなかなか上がらない上に社会保険料がどんどん上がって自分が生きていくことが精いっぱいの若者がどんどん増えていくため、結婚をする経済的余裕や子供を産み、育てていく経済的余裕がますますなくなっていくことから、少子化はますます加速的に進んでいくと思われます。
さらには、AIが今後急速に進化していくことが予想され、事務系の仕事がAIに奪われていくことが予想されているため、求人倍率はますます高くなっていくことが予想されます。
しかし、皮肉にもこの人手不足の問題はいろいろな仕事を奪っていくであろうAIが解決すると思われます。
人手不足の業界がある一方で、AIの普及で職がなくなっていく業界があり、10年後~20年後には現在の職業の半分はなくなると言われており、そのころの世の中は今では想像がつかない世の中になっているかもしれません。
人間型ロボット技術も急速に進化しており、AIの進化と相まってアンドロイドのようなロボットが誕生して、人間に代わって人手不足を補っていくでしょう。
そのような社会がさらに進化していくと、いつか人手不足が転じて失業者が増え続けていくでしょう。
ロボットでも出来ないような新たな職業を見出していかない限り、この世の中は景気がよくても失業者であふれることになるかもしれません。
現に米国では、証券会社には既にデイトレーダーはほとんどおらず、株の売買は各証券会社のAI同士の戦いになっており、また、数年前からAIまで行かずにクラウド会計ソフトの段階で税理士や会計士の仕事が相当失われています。
我が国においても税理士、公認会計士、弁理士などの士業の存続が危ぶまれています。社労士も手続き代行業務が失われていくことが予想されるため、コンサルタント業務に生き残りをかけるしかないのかもしれません。
また、少子化で労働人口が減って、人材派遣業が衰退していく代わりに、AIロボットの派遣業が中心となり、より優れたAIロボットを開発するためにメーカー間の熾烈な競争が続くことになるでしょう。このとき国の統計では「労働人口」の統計に加えて、「人間型ロボット数」の統計を取るようになるでしょう。
運送業界での人手不足については、近い将来、高速道路だけではなく、一般道路においてもAIを備えた無人自動車が普及し、トラック運転手やタクシー運転手が不要となるかもしれません。
建設現場などで危険有害な作業に従事する業務については、ロボットが作業するようになり、重篤な労働災害は減少するでしょう。
今後さらに人手不足が深刻な状況になることが予想される介護業務などについてはロボットが代替することとなり、長時間労働や腰痛災害等の問題もなくなるでしょう。
金融機関については、既に中間管理職が不要になりつつあり、相当な数の職員がいなくなるでしょう。
多店舗型小売業については、少数の正社員と多数のパート社員で成り立っていますが、これからはレジも自動セルフ会計により無人化され、人間またはロボットの店長と少数の作業ロボットだけになるでしょう。
また、ロボットではまだできないファジーな作業や繊細な判断を要する作業については人間が行い、店長のロボットがそのような人間を指揮管理する時代が来るかも知れません。
この来る第4次産業革命は、かつての産業革命のように機械化、電子化によって特定の業界の失業者が出ても新たな職業が生まれた時代と違って、人間型AIロボット化によって新たな職業が生まれることはあまり期待できないような気がします。たとえ新たな職業が生まれたとしても失われた職業のほうが相当多いのではないかと思います。
このような社会に対応していくためには、今とは全く異なる社会のしくみを構築していく必要があるでしょう。
AIロボットに仕事を奪われた人間は、どのように収入を得て生きていけばいいのでしょうか。
働き口を失った人間は、生活困窮者となってますます結婚する者が減り、結婚できたとしても子どもを育てるほどの経済力が乏しいため、ますます少子化が進むという負のスパイラルが加速していくおそれがあります。
我が国では人口を維持するのに必要な合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数)は、2.07とされていますが、2017年では1.44となっています。このまま日本の人口が減り続ければ、将来日本には純粋な日本人がいなくなるかもしれません。
昨年、フェイスブックのAIの研究開発の中で、AI同士で会話させていたところ、人間では理解できない言語を作り出し、勝手に会話を始めたとの報道がありました。この手のAIの学習能力の進化を放置してしまうと、将来人間型AIロボットが普及したときに人間を支配するための策略をAIロボット同士で勝手に話し合う可能性もありえます。
SF映画が実現してしまう可能性がもう既に始まっていることを認識する必要があります。
しかし、人間の科学技術に対する知的欲望を抑えることは不可能であると言われています。
知的欲望は人間の知性というより本能だと思います。
幼い子供がこの世に生まれて初めて見るものなどに対して「なせ?どうして?」と親に聞く心と本質的には同じだと思います。
その本能が、かつて、核爆弾の発明に繋がったようなことにならないことを祈っています。
AIが人間の知能を超える「シンギュラリティ」は2045年と言われていますが、もっと早くその日が来る気がします。その日が到来する前にAIが暴走しないよう何らかの対策を立てる必要があると思います。