初心者向けジャズのアドリブ演奏の上達の近道

私は大学生のころモダンジャズ研究会でジャズピアノを弾いていました。
ジャズファンの方はいつごろからジャズを聴いているのでしょうか。ジャズを聴くようになるころって人さまざまだと思いますが、ジャズを普段聴かない人はジャズって難しいとか、聴いてもよくわからないとか言う人もいるかもしれません。私も中学生まではほとんどジャズを聴くことはありませんでした。たまにどこからか流れてくるポピュラージャズでテイク・ファイブなどは、聴いていて心地よくとてもイイ曲だなあと子供ながら思ってました。ジャズとの接触はその程度で、中学のころはポップス、フォーク、ビートルズなどポピュラーな和洋音楽を聴いていて、高校あたりからロックに傾聴しました。

私は好奇心が強い性格なので聞いているだけでは物足りなくなり、自分で演奏してみたいという衝動にかられて、エレキギターで外国の有名なロックギタリストのコピーをしたりして、ロックギターのアドリブテクニックを磨きました。
私が学生のころ一番尊敬していたロックギタリストはテン・イヤーズ・アフターのアルヴィン・リーでした。私は大概のロックギタリストのアドリブはほぼコピーできましたが、アルヴィン・リーだけは、他のギタリストにはない独特のアドリブラインを持っていてその速さやテクニックはなかなかまねできませんでした。

当時のハードロックはブルースをベースとしたハードブルース(ロックンロール)が主流でした。ブルースは12小節で基本的なコード進行もきっちりと決まっているため比較的ハードブルースをマスターするのはそれほど難しくはありません。

ほかの人はどのようにアドリブの訓練をしているのか知りませんが、私の場合、譜面は一切見ないで、耳でアドリブラインを覚えて楽器に再現するという方法でした。
オクターブ奏法で一世を風靡したウェス・モンゴメリーも楽譜が読めず、全て耳で覚えて一流のジャズギタリストになりました。

一通りロックギターのテクニックを自分なりにマスターしたところでロックのアドリブに少し物足りなさを感じるようになってから、次第にジャズの複雑で先が読めないアドリブに興味を持つようになり、ジャズに傾いていきました。

年齢とともに音楽の好みが変わっていくのは、やはり子供のころは大人よりも素直な性格なので、わかりやすくて、単純で、比較的簡単なコードで構成している曲を好む傾向があると思いますが、中学生や高校生あたりになると、少し自我に目覚めた自分をアピールするような音楽や世の中を批判的な眼で見るようになり反体制的な考えを主張したいという思いが加わってロックなどのハードな音楽に共感を覚えていくことが多くなるのではないかと思います。実際、私の場合そのような尖った感性でロックを好むようになりました。

しかし、年を重ねるにしたがって、次第に性格が丸くなり人はロックから最後は演歌に変わったり、私のようにジャズに変わっていく人が多いのではないでしょうか。もちろん高齢になるまでハードロックを貫き通す人もいるでしょうが…。

私は、高校3年のころ、本格的なジャズは聴いてもその良さがあまりわからなかったので、まず、ロックとジャズを融合したフュージョンやクロスオーバーから入っていきました。当時はジャズトランペッターのマイルス・デイビスがその先駆者であったため、よく聴き、日本ではジャズギタリストの渡辺香津美(教本も買いました)やナベサダなどを聴いていました。次第にジャズのアドリブに抵抗がなくなっていき、次のアドリブラインが予測できるようになっていきました。
私が最も尊敬するジャズギタリストはジョーパスです。彼は、ものすごいテクニシャンでアドリブラインも独特でなかなかマネのできない人でした。

私はジャズピアノにもたいへん興味があったので、ジャズギターの練習をしながら、ジャズピアノも練習していました。
ロックもジャズも共通してアドリブを上達させる近道は、まずブルースのアドリブをマスターすることです。
ロックもジャズも基本はブルースです。
ブルースが演奏できなければロックもジャズも演奏はできません。
おおざっぱに言うとブルースを8ビートにすればロックンロールやハードブルースになり、4ビートにすればジャズになります(たまにジャズで16ビートがありますが…。)。

ブルースにおけるロックとジャズの違いはリズムだけでなく、もう1つ重要な違いがあります。それはコードの種類です。もちろんベースとなるキーは同じですが、例えばロックなどはキーがCであれば単純にCコードを使うのではなく、7thコードなどを使いますが、ジャズだと9thコードや13thコードなどを普通に使います。
なぜならジャズという音楽は、常に緊張と緩和を交互に出していかないと陳腐な音楽に聞こえ、飽きてしまうからです。
だから、ジャズは不協和音をたくさん使います。安定した音階で癒されるような旋律に慣れてきた人には最初は違和感があると思うのでジャズの音楽がすんなりと入っていかないのではないかと思います。

子供のころは普通甘いものが好きで、ピーマンのような苦みがある野菜などは嫌いな子供が多いですが、大人になるにつれて、たとえばビールやピーマンのような苦みも旨味と感じて好きになることが多いと思います。
ジャズの不協和音は食べ物に例えると、この苦みに相当するのではないでしょうか。要するに大人になって初めてわかる味なのです。私にとって不協和音はもはやとても心地よく聞こえる和音です。まさにジャズの真骨頂ともいえるもので、これなくしてジャズは成り立ちません。

ブルースのジャスのアドリブをマスターできれば、ジャズ独特のアドリブ回しのこつがつかめるので、それからブルース以外のジャズにそのフレーズなどを取り込みながらジャズのアドリブを磨いていけば早く上達するはずです。

ブルースのいいところは、全員がお互いに初対面でジャズセッションをするときにブルースは基本的に誰でも演奏できるはずなのでキーさえ決めればすぐにブルースの演奏ができるというところです。

私は大学のころ、毎年1回自由が丘にあった「ニューファイブスポット」という日本で最も由緒あるジャズのライブハウス(来日した外国の一流ジャズミュージシャンの多くがそこで演奏していたところ)で7人のメンバーの中でピアノを担当していました。ギターでも良かったのですがそのグループには既にギター担当がいたのでピアノにしました。私の得意技は速弾きです。好きなジャンルはバップからフュージョンでした。作曲も10曲くらいしました。当時、モダンジャズ研究会のギター担当の先輩がNHK教育テレビのジャズ講座の講師をしていました。その先輩は大学卒業後プロになったみたいです。

大学を卒業して以来、セッションを組んだことはありませんが、たまにはしてみたいなあと思います。