世の中に3次元以外の幾何的次元は実在しない

皆さんがよくご存じの幾何的な「次元」の定義は、0次元が「点」、1次元が「線」、2次元が「面」、3次元が「立体」を表します。
ところが、正確に言うと3次元以外はこの世には実在しません。
まず、「点」ですが、点とは普通、芯の尖った鉛筆の先を紙に突いた印をイメージすると思いますが、その印は小さいながらも大きさがあります。点の定義は大きさがなく、位置だけが示されたものです。仮に点には最低限の大きさがあったとすれば、理屈上さらにそれを分割することが可能になるので、数学的に最小の長さというものはないのです。つまり、点は数学的な概念であって、実在するものではありません。

ちなみに量子力学的には電子は理論上大きさがない点として取り扱われており、また、量子力学的最小単位の長さはプランク定数と呼ばれ、その長さは1.616×10^-35ととてつもなく短い長さとなっています。
したがって、物理的にはこれ以上分割はできないのかもしれませんが、どんなに小さくとも大きさがある以上は、さらにその大きさの中心のような位置があることが予想されるため、数学的な「点」の定義から外れます。
電子の大きさは実験上はある大きさ以下であることはわかっていますが、まだ正確な大きさは発見されていません。電子は大きさがなく点と見なしているのは、あくまで理論上の仮説です。

次に「線」ですが、線は決して点が連続的に集まった集合体ではありません。何故かというと、数学的な定義から点には大きさがないため、長さがゼロの点を無限個繋げても長さはゼロのままであり、線にはならないからです。仮に線の定義を隣同士の点の距離を一定の長さにして繋げたものとしたとすると、それはもはや実線ではなく、点を並べた「点線」です。

したがって、もし、幾何的な線を定義するとすれば、点を動かしたときの軌跡であると定義することができます。

同様に、線には長さはあっても幅がゼロと定義されるので(幅がゼロでなければ、きしめんのような面になってしまう)、面は線の集合体ではなく(線を無限個重ねても1個の線の幅がゼロなので、面が出来ない)、線を動かしたときの軌跡であると定義できます。

同様に立体は面を動かしたときの軌跡であると定義できます。

また、単独の線や面はこの世に実在しませんが、境界線や断面や球の表面など1つ次元が高いところの末端(境界)に1つ下の次元が実在するではないかという声が聞こえてきそうですが、境界線と言っても面の端は、実際には原子が並んでおり、1つひとつの原子は概ね丸い形をしているため、その境界線の実態は、線ではなく、丸みを帯びたデコボコの面となっています。

また、立体のきれいな断面や表面は遠くから見ると面に見えますが、実際は原子が並んだデコボコの面です。

したがって、この世の中には、どうあがいても2次元以下の世界は存在しません。スケールを荒くすれば近似的には存在しますが、それは3次元の世界の中での近似的な次元を定義しているに過ぎないことです。

つまり、2次元以下の概念は数学的な抽象的概念です。

また、3次元空間の3つの次元(3つの座標軸)に時間の軸を4つ目の次元として加えた4次元時空体という概念がありますが、これももちろん実体のない数学的な抽象概念です。

そもそも空間と時間を同じ土俵に乗せることはできません。
3次元空間の3軸は空間の中の位置(空間座標)を表すものであり、時間はその位置が移動する速さの基準を表しているので、同じ座標軸に乗せるわけにはいきません。空間と時間は独立した次元であり、時間は空間と同じ仲間の次元ではないという意味で空間的な4次元は存在しないという意味です。

しかし、数学的には次元の個数は無限に存在します。
何故なら数学は抽象的な概念の学問なので、様々な事象がお互いに影響を及ぼすことがなく、皆独立した要素として構成されているものであれば、その個数分だけ次元が存在します。

したがって、空間と時間はそれぞれ独立した次元なので、空間と時間の概念を持ち合わせた事象は4次元の世界となります。

しかし、何度もいうようにこれは実体ではなくて、数学的に処理する上での概念です。つまり、3次元空間座標と時間の関数で構成された方程式は4次元で表されるということです。何も4次元の世界がそこに見えるというものではありません。また、次元自体は空間以外にもいくらでもありますが、数学上の幾何的な次元で定義すると上限は3次元までです。

超ひも理論では極小の世界では6次元の世界が見えない形でコンパクトに閉じ込められていて実際の4次元時空と併せて10次元の世界になっているということですが、これも数学的な処理によって6次元をコンパクト化させた抽象的な次元であって幾何学的な10次元の世界ではありません。

このように世の中には、4次元以上の世界を現実の世界と勘違いしている方が少なくないと思いますが、4次元以上の世界は全て数学的な抽象的概念であって幾何的な次元は世の中には3次元しか存在しないのです。前述のとおり0~2次元の世界も厳密には世の中には存在しない数学的概念です。