1.AIは記憶力・学習能力は既に人間を超えている
2045年にAIが人間の能力を超えると言われています。確かに機械学習や深層学習が発明されたことによって、従来進化が途絶えていたAIが飛躍的に進化し、特定の分野では既に人間の能力を超えています。人間では到底全てを記憶できない膨大な過去のデータ(ビッグデータ)をAIに記憶させて、しかも学習させる能力を備えさせることにより、特定のゲームなどでは人間を超えることが可能となったわけです。
たとえば、囲碁で言えば、定石を全く覚えさせなくても過去の膨大なプロの棋譜を記憶させて学習させるだけでAIはそのデータを基に次の一手を判断します。
人間で言えば、今までの経験に照らして次の一手を判断するので、ある意味、AIの思考回路は人間の考え方と似ているところがあります。
2.AIが人間に及ばない知的能力
学習能力が備ったAIは、もはや人間とほぼ同じ思考能力を持つことになるので、この能力を高めればあらゆることの知的能力について人間を超えることができるのではないかと思われるかもしれません。
しかし、AIにはまだ人間に及ばない知的能力があります。
以前に書いた記事でも触れましたが、1つは、AIは膨大な過去のデータを分析して最適な回答を選択することは得意ですが、それはあくまでもベストな回答ということであって、99%は正解かもしれませんが、100%正解であるということではないということです。
また、たとえ正解を出したとしても、その正解を出した理由がわからないということです。囲碁でAIが打った手について、何故そのような手を打ったのかその過程は常にブラックボックスとなっているため、囲碁に限らず、AIが出した答えがどのような論理過程を経ていたのか、全く人間にはわからないため、はたしてその答えが本当に間違いないのかどうかはわからず、結局AIが出した答えなのだから多分最も正解に近いのだろうということくらいしか評価できません。
このAIが出した答えをAI自身で論理的に説明できるプログラムが構築できれば、さらに深層学習の発明に匹敵するほどの発明になることでしょう。
何故なら、人間がAIの答えの根拠を知ることが出来れば、答えの意味を納得することができるため、今後の人間のものの考え方について参考になるからです。
3.もう1つ現在のAIが人間の知的能力に及ばないもの
また、もう1つ、今のAIの技術ではまだ人間の脳の真似ができないことがあります。
それは、AIは、原因に対する結果や質問に対する回答のような問答形式でしか学習できないということです。
つまり、ある知識や法律・規則などのデータをいくら覚えさせても、そのデータを基にある質問に対して答えを出すということはできないのです。
したがって、AIには常にQ&A形式で知識を覚えさせているため、何かの質問があったときは、入力されたQ&Aの中から推測して最良の答えを出そうとするわけです。
したがって、AIに全く知らない概念だったり、似たようなQ&Aのデータがない場合は答えが出ません。
たとえば、ある行政の法律やその行政解釈全てをAIに記憶させた上で、具体的な事例について質問して、どの法律の何条に適用され、その事例は違法かどうかということについて根拠を示してAIに答えさせることはできないのです。
それがもし可能となるためには、膨大な相談事例や判例などをQ&A形式で記憶させる必要があります。ただし、そのデータはあくまで一部のQ&Aであり、ベストな答えが出たとしてもそれが正しいとは限りません。
もっと、わかりやすい例で言うと、数学の公式を全て記憶させても、ある問題をAIに出したところで、その問題の意味を理解できたとしてもどの公式を使ってどのように解いたらいいのかわからないはずです。
AIに答えさせるには、その公式を使った膨大なパターンの問題と解法を覚えこませれば解ける可能性は出てくるかと思います。人間も数学の試験勉強では、単に公式を覚えるだけでは問題を解くのは難しく、事前にその公式を使った問題をいくつか解く勉強をします。
AIも人間と似てはいますが、人間は、練習問題を勉強しなくても公式さえ覚えていれば問題を解く能力はありますし、法条文やその解釈を知っていれば、具体的な事例を覚えなくても、ある事例について、適用される法条文を判断し、その事例を評価することができます。
4.まとめ
AIは、少なくともこの2つの人間の能力を持つことができない限り、人間の知的能力を超えることはできないでしょう。
シンギュラリティと言われている2045年までにこの2つの能力をAIが持てるかどうかは人間の英知にかかっています。