1. AIによる産業革命は新たな職業を生まない
AIの進化によって、近い将来、人間の仕事のほとんどがAIによって奪われ、大量の失業者が出る可能性が高いと言われています。
今までの産業革命は、産業革命によって従来の仕事が失われても新しい職業が生まれることによって失業が回避されてきたのですが、第4次産業革命は、ほとんどの仕事をAIがやってしまうので、新たな職業はほとんど生まれないと言われています。
2.大多数の労働者が職を失うと購買力が落ち企業も衰退
人間は企業に対して労働の対価として企業から賃金を得て、その賃金で食べ物などを買って生きています。
企業は経営を維持していくためには資金はもちろんですが企業活動を運営するための労働力が必要となります。
その労働力は今までは人間が供給していました。それがAIに替わったとき、AIは人間よりもはるかに正確にスピーディーにしかも的確な判断力まで備えて文句も言わずに1日24時間1年365日働き続けます。
人間を雇う余地はなくなります。いかに優秀なAIを導入するかが企業間の競争となる社会となるでしょう。もうすでに証券会社ではAIの導入によってデイトレーダーはいなくなり、今や世界の証券会社は真っ先に株の動きを予測ために数千分の1秒の単位でどこよりも早く情報を得ようとAIの開発の熾烈な競争を繰り広げています。
したがって、将来、人間は働きたくても仕事がありません。経営者はAI汎用ロボットやAI特定ロボットしか使わなくなるでしょう。
そのため、AIで儲けた経営者以外の大多数の人間は、ほとんど何も買うことができなくなり、個人消費はしだいにゼロに近づきます。そして、餓死していく人や自殺する人々が増加していくでしょう。
そうなると、ものを売って儲けている企業・経営者は、ものを買える人がどんどん減っていくので、生き残った富裕層同士しか売買ができなくなります。そうなると世界の人口は富裕層だけが生き残る少人数となるでしょう。
少人数となった人類は、確率的に突出した才能を持つ人間の出現が激減し、ノーベル賞級の発見や発明をする人間もほとんどなくなるでしょう。
多分、人間に替わってAIがノーベル賞級の発見や発明をすることになるでしょう。
そして、いつの日か、核戦争が起こったり、遺伝子操作を誤って最強の生物を開発してしまったり、最強のウィルスが出来てしまって、AIでも治療することができなくなった場合、少数の人類が絶滅してしまう可能性もあります。人類が滅亡した後は、AI汎用型ロボットが人類の後継者となるかもしれません。多分、そのころは、AIが人間の知能をはるかに超えていて、人間を絶滅危機品種の生物として、保護することになるかもしれません。
3.将来AIと共存できる社会制度はこれしかない
これからもAIを駆使して儲け続ける一部の富裕層は、人類を滅亡させたくないでしょうから、富裕層だけが生き延びる道は選択しないでしょう。
そうなると、人類を滅亡させない方法は今のところ、ただ1つこれしかありません。
それは、ベーシック・インカム(basic income)です。
ベーシック・インカムとは、最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策です。
もう既に世界ではAIによる失業対策としてベーシック・インカムの導入についてさかんに議論されています。
2016年6月5日、ベーシックインカム導入の是非を問う国民投票がスイスで行われました。その内容は、成人国民に月額2500スイスフラン(約28万円)、未成年者には月額625スイスフラン(約7万円)のベーシックインカムを給付するかどうかを決めるものでした。制度に必要な費用の大半が税金によってまかなわれ、制度導入に伴って年金や失業手当などの社会保障制度の一部を打ち切りベーシック・インカムに一本化し、収入が月額2500スイスフラン未満の人にベーシック・インカムが支給されるものでした。
したがって、通常よく言われる国民の所得額に関係なく国民全員に支給される制度ではありませんでした。
国民投票の結果は、投票率46.3%、賛成23.1%、反対76.9%で否決となりました。連邦政府は、制度導入に係る巨額税源不足と経済競争力低下の懸念を表明していて、国民の支持が広がりませんでいた。
フィンランドやオランダでは一部の自治体で試験的に導入して検証してみようという方針を出している自治体もあるというので、今後はその辺りの検証結果が待たれることになりそうです。
アメリカのハワイ州は産業のほとんどを農業や観光業で賄っているため、農作業、タクシー運転手、ホテルのサービスなどこれからほとんど自動化されることを予想して、もうじき失業者が大量に出ることを懸念するなどAIに対する危機意識が非常に強くなり、州議会が2017年6月、べーシック・インカムを導入すべく作業部会を設立する法案が可決されました。
日本ではまだあまり話題になりませんが、昨年の衆議院選挙で希望の党の小池都知事がベーシック・インカムを導入するといって少し話題になりました。
しかし、今の日本ではまだ時期尚早で、その財源確保の方法や税法の改革案、AIの進化・普及の程度がまだ追いついていません。
4.BI(basic income)の新たな戦略
いろいろなインターネット情報では、ベーシック・インカムの財源として、年金の財源や消費税の増税等基本的には国民から取ろうという発送が多いですが、この発想では収入がなくなっていく国民から金を取ることは本末転倒です。
ここは、お金を国民に還元しなければ商品やサービスを買ってもらえない立場である企業から、たくさんの税金を取らなければなりません。
企業は、今までよりは痛みがありますが、企業論理から見れば、言い方は悪くなりますが、にわとりにエサを与えなくては卵は得られませんし、牛や豚にエサを与えなければ肉を食べることはできません。何でもただで手に入れることは普通できないのです。
しかも、AIにより事業が自動化されれば、経営者が汗水流して努力しなくても企業の運営状況や市場の動き等をAIでチェックして経営者が最終的な経営判断をする程度で経営は成り立つようになるので、がっぽり税金を取られても実質的な痛みは少ないでしょう。もちろん企業といっても赤字の企業や儲けの少ない中小企業などからがっぽり税金を取るわけにはいかないので、けた違いに安定して儲けている超優良企業などを主な対象とすればいいでしょう。
また、ベーシック・インカムで毎月一定額を富裕層を含めて全国民に支給するメリットとしては、富裕層を含めることによって、行政手続きに要するコストをかけなくて済むことになるからです。
しかし、ここで気を付けなくてはならないことは、支給する金額を快適に過ごせるレベルの金額にしないことです。これは、そのレベルにすると莫大な資金源が必要となるばかりでなく、働く意欲を喪失させる人々を増やす要因になるからです。
したがって、働きざかりの独身でも子供がいる家庭でも最低限の生活ができる程度の金額にしておいて、もっと贅沢な生活を望む人には少しでも働いて(働き口は少ないと思いますが)収入を増やせる制度にすればよいと思います。
また、よく自分が好きなことをして、それを仕事に生かしたいと思っている人にとっては、生きていくためにアルバイトをしながら続けていることが多いと思いますが、ベーシック・インカムによって最低限の生活が保障されれば、思う存分、好きなことや好きな研究に打ち込むことができるので、かえって優れた芸術家や科学者が増える可能性があります。
これこそ、長年人類が求めていた社会像かもしれません。
AIが人類を破滅させるか、BI(ベーシック・インカム)の導入によって人類を救うかは今後の人間の英知が問われる最後のチャンスとなるでしょう。